北九州市立大学環境技術研究所

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関連設備・研究施設

Equipment & Facilities

メルディア高機能木材研究所

木質建材CLTを使用

メルディア高機能木材研究所は、㈱三栄建築設計(メルディアグループ)との共同研究の拠点として、2020年1月に竣工しました。総事業費1億4,336万円の3割に当たる4,599万円を環境省の二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(木材利用による業務用施設の断熱性能効果検証事業)として受け建設されています。この補助金は、CLT 等に代表される新たな木質建材を用いた建築物の省エネ効果等を定量的に把握し、低炭素建築物等の普及を通じた業務部門の大幅な低炭素化に資することを目的としています。CLTはCloss Laminated Timberの略で、木の板材を並行に並べた層を板の目が互いに直行するように重ね接着した集成材で、構造材として利用可能な大きな板材です。この建物は、国内で製造可能なCLTの最大寸法である12m×3mの材料を使用しています。一方で、板の厚さ自体は90mmと構造材として使用できる国内のCLTの中では一番薄く、105mm角の柱を利用した一般の木造住宅よりも薄い壁となっています。
またCLTの面材としての特性を活かして、構造躯体を屏風のように折版状に構成し、地震力や風力に耐える折版構造です。屋根をCLTを用いて折版構造とする事例は既に存在しますが、外壁と屋根を合わせて、建物全体でCLTの折版構造で作った建築としては、日本初の試みとなります。壁と屋根共にCLTの構造体とすることで、断熱を担う外皮性能と構造が一体となって建設でき、工期の短縮とコスト削減につながっています。

天井高8mの空間を僅か90mm厚のCLTを屏風状に配置して実現 写真:大森今日子
天井高8mの空間を僅か90mm厚のCLTを屏風状に配置して実現
写真:大森今日子
内装を木材を“現し”とし、居心地のよい空間を実現 写真:大森今日子
内装を木材を“現し”とし、居心地のよい空間を実現
写真:大森今日子
CLTによる屏風状の折版構造の概念図(構造設計、藤田慎之輔准教授)
CLTによる屏風状の折版構造の概念図(構造設計、藤田慎之輔准教授)

高い省エネルギー性能

エネルギー消費量は、従来の同じ床面積のオフィスと比べ約半分と非常に小さく、補助金の趣旨である業務部門の大幅な低炭素化が実現できています。これは、この建物のすべての外壁と天井面が、熱伝導率の小さい杉材のCLTで構成され、さらに断熱性能を高めるため、その外側に高性能の断熱材を貼付していること、熱が逃げやすい窓面積を最低限に抑えていること、構造躯体に用いた木材が、コンクリートや鉄に比べ熱容量が小さいことが挙げられます。熱容量は、温度を1℃上げるのに必要な熱量のことで、比熱の大きなコンクリートや鉄を構造躯体とする建物は、木造に比べ必然的に熱容量が高くなります。暖冷房時は、比熱の小さな空気だけでなく躯体の温度が室温と同等になるまでエネルギーが使われるため、熱容量の高い建物ほど多くのエネルギーが必要となります。

耐候性の高いガルバリウムを用いた外部の表情とは裏腹に、室内は木材を全面的に“現し”とし、非常に居心地のよい空間となっています。

メルディア高機能木材研究所での研究紹介

日本国内における森林資源の保全と活用は、CO2削減目標達成のためにも必要不可欠で、特に戦後、大量に植林された杉林は、杉が建設材料としては強度がないことや人件費の高騰によるコスト高のために利用が進まず、国内の人工林の荒廃が顕著です。

これまで、「無限の可能性を秘めた木という素材の新発明、新発見」をテーマに掲げる㈱三栄建築設計(メルディアグループ)との産学協同で、世界が直面する環境や資源の問題に対し、再生可能な木材を有効利用することで対処することを目的として研究を行ってきました。新たな研究所は、より実践的な研究開発を今後も、共同で継続的に行うため建設されました。